
御祭神:須佐之男命について
【須佐之男命とはどんな神様?】
須佐之男命は、日本神話において最も力強く、荒ぶる力と浄めの力を併せ持つ神とされています。
『古事記』や『日本書紀』において重要な神格の一柱であり、天照大御神・月読命と並ぶ「三貴子(みはしらのうずのみこ)」の一神です。伊邪那岐命が黄泉の国から帰還し、禊祓(みそぎはらい)を行った際、鼻を清めた時に生まれたとされます。
その誕生は、すなわち「穢れ」からの再生であり、浄化を経て新たに神が生まれるという、日本神話における「禊」の深い象徴性を体現する場面でもあります。
須佐之男命はしばしば「荒ぶる神」と形容され、暴風・海原の象徴とされてきました。実姉である天照大神の統治する高天原に上った際、彼の荒々しいふるまいが、天照大神を岩戸隠れに追いやる事件(天岩戸神話)を引き起こします。
しかしながら、その後、須佐之男命は地上界(葦原中国)に降り、「八岐大蛇(ヤマタノオロチ)」を退治し、櫛名田比売(クシナダヒメ)を助けるという英雄神として語り継がれています。
この神話の中で、須佐之男命は暴風や混乱を鎮め、秩序と豊穣をもたらす存在へと転じ、人々を守る神として信仰されてきました。
さらにこの神話では、八岐大蛇の尾から出てきた「天叢雲剣(のちの草薙剣)」を天照大神へ献上することで、両神の和解が描かれます。これは、秩序と混沌の対立から和合へのプロセスを神話的に示しており、神道的価値観である「和(やわらぎ)」の理念が垣間見えます。
▶︎ 須佐之男命の主なご利益
須佐之男命は、以下のような多様なご神徳をお持ちの神様です
ご利益の内容 | 説明 |
---|---|
厄除け・災難除け | 「荒ぶる神」が転じて「災厄を祓う神」となったことに由来します。特に悪疫退散・災難除けに霊験ありとされます。 |
疫病退散 | 中世以降、「牛頭天王(ごずてんのう)」と習合され、疫病を退ける神として篤く信仰されました。 |
家内安全・健康祈願 | 家族・地域を守る神として、暮らし全体の平穏を祈願する対象となっています。 |
五穀豊穣・農業守護 | 出雲神話では土地を治めた神として、農業の守護神としても信仰されています。 |
勇気・再生・勝運授与 | ヤマタノオロチ退治の神話から、困難を乗り越える力を授ける神としても尊ばれます。 |
▶︎ なぜ「厄払いの神」として知られているのか?
須佐之男命は、古代において「荒ぶる神=災いをもたらす神」として恐れられていましたが、同時にその力を正しく鎮め、祀ることで、厄災を除く神としての力が発揮されると信じられるようになります。
中世以降、「牛頭天王」と同一視され、疫病除け・厄除け・方位除けの神として全国各地の祇園社(後の八坂神社など)で篤く祀られました。
これが「祇園信仰」と呼ばれるもので、夏の疫病流行期に行われる「祇園祭」や「夏越の大祓(なごしのおおはらえ)」とも深く関係しています。
▶︎ 夏越の大祓と茅の輪(ちのわ)くぐりの由来
〜備後国風土記に伝わる蘇民将来(そみんしょうらい)伝説〜
「茅の輪(ちのわ)くぐり」は、毎年6月や12月に行われる「大祓(おおはらえ)」の神事の一環として、全国の神社で行われています。この茅の輪くぐりには、須佐之男命と備後国風土記**に記された「蘇民将来(そみんしょうらい)」の伝説が深く関わっています。
▶︎ 蘇民将来の伝説(備後国風土記逸文)
須佐之男命が旅の途中、ある村を訪れます。
裕福な弟・巨旦将来(こたんしょうらい)は冷たく追い返したのに対し、貧しい兄・蘇民将来は粟飯でもてなしました。
その夜、須佐之男命は正体を明かし、「お前の子孫は代々疫病から守ってやろう」と言い残し去ります。後に村に疫病が流行した際、蘇民将来の家族だけが助かりました。
須佐之男命は、「『蘇民将来之子孫也(そみんしょうらいのしそんなり)』という印を門口に掲げておくと、災いを除ける」と伝えたとされています。
▶︎ 茅の輪くぐりの意味
この伝説を元に、茅(かや)の輪をくぐることで穢れを祓い、無病息災・厄除けを願う神事が生まれました。
現在でも、「蘇民将来之子孫也」と記された護符を配る神社も多く、須佐之男命の力によって、家族や地域を疫病・災厄から守るという信仰が今に続いています。
【須佐之男命の後裔と文化的影響】
須佐之男命は出雲地方に降臨し、多くの子孫(いわゆる「神々」)をもうけたと伝えられています。特に、大国主命(オオクニヌシノミコト)はその系譜に連なるとされ、出雲大社を中心とする国土経営神話(国譲り神話)にも繋がっていきます。
出雲神話体系の根幹には須佐之男命の影響が濃厚に存在し、これは中央(高天原)との神話的な対立と融和を象徴しているとも解釈されます。実際に、記紀神話においても出雲系譜の神々は、しばしば中央の神々と異なる性格を持ちながら、最後には国家の統合に寄与する形で描かれます。
また、須佐之男命は「祓いの神」「疫病除けの神」としても広く信仰され、須佐神社(出雲市)、八坂神社(京都市)などでは牛頭天王(ごずてんのう)と習合され、疫神信仰とも結びつきました。これは、神仏習合時代における信仰の柔軟な展開を示す好例といえるでしょう。
【須佐之男命信仰の現代的意義】
現代においても須佐之男命は、荒々しさと優しさ、破壊と再生、混沌と秩序という二面性を併せ持つ神格として、人生の転換点や厄除け・祓いの祈願対象として広く崇敬を集めています。
特に、困難や試練に直面した時、「スサノヲのように試練を超えて自己変容を果たす」物語構造は、現代人にも深い共感と励ましを与える存在です。
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